本紙 113,3 ×50,2㎝
軸装 189 ×53,8㎝
紙本墨画

池大雅
享保8年(1723)~安永5年(1776)
諱/橆名(ありな)・勤
字/貨成・公敏
号/大雅堂・三岳道者・霞樵 他
京都に生まれ活躍した、絵師で書家、文人。
当時、応挙・若冲に並ぶ人気アーティスト。

本作品は
限界まで渇筆
とても少ない筆で描いています。

大雅作品の一番の魅力は
その、独特な画世界に、引き込まれてしまう心地よさ。

こんなに少ない筆致でありながら
観る者に少し眩暈をおこさせて
画の中に引き込みます。

遠くに見える山の水平は斜めに描かれます。
大雅さんは、20歳代で指墨画(指や爪を筆代わりに画く)では
水平を傾斜させる作品を多く描いています。

絵師としての出発点が、扇に絵を描くことだったため
扇の構図感覚が表されているといわれています。
私は、見る者をクラクラさせる技法の一つかとも思います。

大雅さんの作品で特に評価が高いのは
明るく美しい色彩の点描による作品です。
それらの、
たくさんの木々を描く作品では、
樹木の種類によって葉の形を変えながら
非常に丁寧に、葉の一枚一枚を描き、
観る者に
まるで森の中に迷い込んでしまったように
右も左もわからない、
それどころか、天地さえ不安になるような感覚を感じさせる大雅マジック。

本作品では、
極限に少ない筆で、その「迷い込んで自分を失う」
《自然の中でエゴを失う》
魅惑の世界を描き出しています。

技の一つとして
若い頃好んで使った斜めの水平により、
観る者の平衡感覚を狂わせています。

手前の島の中央の木は
下半分の幹が擦れてほとんど見えません。
前景としての濃さは
黒く素早く引かれた柳の葉に託されますが
宙に浮かび上がってみえて不安定。

画面左手前の細い橋から島へ、
島の背面から左上へ延びる、平らな地面によって
遠山へと道は続きます。

遠山の水平が右肩上がりのため
下から
《左→右→左→右》
と目線が上へ誘導され
描かれてはいない画の外の世界まで
連れていかれてしまうんです。

それにしても
なんてへんてこな地面!
ずーっと平らで遠近感もありません。

へんてこな地面に生えた木と、
真ん中の樹、
右側の樹のてっぺんは、ほぼ同じ位置。
これも遠近感を失わせる要因のように思われます。

左上に書かれた詩は
中国唐時代の李白の七言律詩の中の二行です。

三山半落晴天外
一水中分白鷺州

三つの山は、青い空から落ちかかってみえる。
(河の)水は、(中洲の)白鷺州で分かれていく。

九霞山樵写意
「石鼎」白文長方印
「池橆名印」白文方印
「玉皇香案吏」朱文方印

使用印と
削がれ、僅かな筆で描き出された見事な表現から
40歳代の作品と考えます。

時代箱と略伝、昭和13年の書付付き

この作品はたくさんの傷みがございますため
格安にせざるを得ません。
コンディションは画像でご確認ください。
気になることはお問合せフォームから
お気軽にどうぞ。

《お買い上げありがとうございます》

うっすらですが、はっきりと、右肩上がりの水平線が描かれています。

左端は上から下まで傷んでいます。印章部分も剥げた部分がございます。

左端傷み

中央部分も上から下まで傷みがございます。

欠損部分。

軸先。

箱。

全景。