本紙 116 ×26㎝
軸装 184 ×34,7㎝
紙本
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池大雅
享保8年(1723)~安永5年(1776)
諱/橆名(ありな)・勤
字/貨成・公敏
号/大雅堂・三岳道者・霞樵・九霞、他
京都に生まれ活躍した、絵師で書家、文人。
当時、応挙・若冲と並ぶ、大人気アーティストです。
20才代ですでに名声が高く、
旅が好きで日本各地を旅したため、
日本各地に大量に贋物が存在しています。
近世の絵師で、
国宝・重要文化財に指定されている作品は大雅が最も多いことは、
現在ではあまり知られていません。
文化庁にも数多くの大雅作品が収蔵されています。
川端康成、梅原龍三郎、谷川徹三ら
一流の文化人、画家たちも大雅に魅了され、
その作品を愛藏されていました。
国宝に指定されている「十便十宜図」は川端康成さんの旧蔵品です。
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「南山寿」
中国の詩篇《詩経》の中の小雅・鹿鳴之什〈天保〉、からの三文字です。
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如南山之寿
不鶱不崩
如松柏之茂
無不爾或承
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南山の寿なるが如く
鶱(か)けず、崩れず
松柏の茂れるが如く
爾の承(う)くる或らざる無し
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南の山がずっと変わらずに存在するように
欠けることなく、崩れることなく
松の木がいつも青々と茂るように
あなたが恵まれない時は無い
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相手の変わらぬ繁栄と長寿を願うおめでたい言葉を、
大雅は伸び伸びと書いています。
大雅の書の魅力は、
古典を掌握してのちに、自由自在な姿を得た、
生き生きとした文字の姿と書全体のバランスです。
時として、大胆に太かったり、擦れたりしています。
本作品は、
その、《太》《細》の振り幅が少ない。
「どんなに太くしてもここまでしか太くならない」
って大きさの筆で書かれています。
一見、魅力に欠けるかと思われます。
私も初めはそう思いました。
しかし、
鑑賞しているうちに、どんどん良くなってきます。
太さに制約のある筆で書かれた分、
内在する強さが濃い。
「山」の鋭い折れ方。
寿老人の頭のように長い「寿」の上部、
高らかに笑い声をあげるような姿の下部。
「千と千尋の神隠し」で、
薬湯に浸かって、積年のヘドロが落ちた川の神様が、
お腐れ神から本来の姿に戻った時の姿のようです。
落款の「九霞山樵書」の書き方も、
とてもイイ。
これは私の勝手な推測ですが、
お酒が飲めなかったといわれる大雅が、
お祝いの席で相伴し、
いつもと違う筆で書いた作品かと思うのです。
「池橆名印」白文方印が、ブレています。
関防印(右上の印章)はブレすぎてほとんど読めませんが、
よくよく見ると
「前身相馬九方皐」朱文長方印が《逆さ》に捺されているんです。
中国の方の作品では、
印章が逆さに捺されていることはレアケースではありませんが、
日本の作品では、非常に稀です。
大らかで、
本質以外のことに囚われなかった大雅とは言え、
素面でしたこととは、思われません。
擦れの少ない黒々とした墨が、
「南山寿」の言葉を、
印象としてもよく現わしています。
本紙と軸装に折れた部分がございます。
少し長めの合わせ箱
古い箱の蓋のみ収蔵
¥300,000
消費税・送料込


「弎岳道者」白文方印

「池橆名印」白文長方
「前身相馬九方皐」

折れ部分

軸先

合わせ箱と古い箱の蓋表

合わせ箱と古い箱の蓋裏

箱内側