本紙 26,3 ×41,7㎝
軸装 117 ×44㎝
紙本
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小堀遠州
天正7年(1579)~正保4年(1647)
二十八日之ひる可被成御出之間
辱存候 可然様に御意得所
仰に昨日之墨跡 只今懸之
かしく
逢見ての
のちのこころに
くらぶれば
むかしはものを
おもはざりけり
十日 花押
小遠州守
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28日の昼にお出ましくださること
大変ありがとうございます。
そうしてくださるご様子から、お気持ちがわかりました。
仰せのとおり昨日の墨蹟を、只今懸けました。
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遠州が28日と書くのは、
利休忌のことでしょう。
ここに出てくる墨跡が、どなたのお手によるものかはわかりませんが、
お茶に関するものであることは、間違いありません。
遠州の署名の左上が、
不自然に非常に汚れているところから察し、
宛名が、意図的に消されているようです。
作品をご所蔵されていたお家が、
遠州からこの消息をもらった人物の直系の場合に、
旧蔵者を明らかにしないために、
このように宛名を消す場合が多く見られます。
「逢見ての」の
一句は、小倉百人一首、
権中納言敦忠の歌。
愛しい人との逢瀬の後は、
ありとあらゆることを深く敏感に感じる。
それ以前は、私の心は鈍く穏やかだった。
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恋に落ちたときだけでなく、
非常に精神的に成熟した、思慮深い生き様に触れたとき、
感動で、こちらの感受性が堰を切って溢れる瞬間があります。
ここで、遠州が
《逢見》たのは、
利休のお茶がより深く自分のモノになる何か、
ではなかったかと、私は考えています。
「それ」を知ってから、私の世界観はすっかり変わってしまった。
アンテナの感度は研ぎ澄まされてしまった。
そう遠州が伝えた、素晴らしい消息と存じます。
本紙は何度も軸装し直された感じです。
大徳寺孤蓬庵先代・小堀卓厳様の極め箱
横浜高島屋美術部封筒付
《お買い上げありがとうございます》