21,5 ×18,8㎝
高さ 4㎝
江戸時代前期
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方形・几帳面・印籠蓋造。
《几帳面》は、
蓋の表面と側面が接合された辺の部分に、
丸みを持たせた段を施した、
手の込んだ装飾面の形状の名前です。
箱の内側には、
左方にオーバルの水滴と、
縁に金を施した硯を嵌め、
右方に、懸子を一枚納めています。
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蓋表には、
険しい断崖から枝を伸ばす松樹や木々、
岩陰の波上の屋敷、
美しい浜辺と波立つ水面の舟が、
黒漆地に肉合研ぎ出しを交えた金銀蒔絵で施されます。
松樹の幹や岩、砂浜には、
金銀の切金が散らされています、
上方右手には、
銀で、雲と、ちょっとだけ姿を見せた月が蒔かれ、
月光によって輝く雲が、
金の撒き暈しによって描かれます。
ねぐらに帰る鳥が列をなして飛んでいます。
美しい情景です。
蓋裏、
懸子・硯面は、
密な梨地に、
菊・桔梗・女郎花・萩・撫子などの秋草と、
小さな蝶が、
金銀の薄肉高蒔絵で施されます。
秋草も、秋草の生える水平も、
金・銀・細かな細かな梨地によって表されています。
その表現の繊細さに感嘆します。
細部を見るほどに、
最高の技術の施されたお品です。
蓋・身の縁に非常に薄く金属が嵌められ、
その金属に、黒漆が施されています。
普通、上等な箱ものの縁に嵌められるのは、
銀か錫ですが、
本作品には、銅が使われています。
漆を施したのは、
銅の腐食が、本体の劣化を招かないためのひと手間でしょう。
柔らかい銅によって薄く施された縁は、
一見、金属が嵌められたとはわからない薄さで、
とてもエレガントです。
小さな補修跡や、蒔絵の小傷み・切金の剥落はございますが、
目立ったキズはなく、
17世紀の作品としては、
奇跡的に良いコンデションです。
ただ、
水滴が、オリジナルのものではなく、
後の時代に補われています。
水滴を嵌める穴が、
元々は団扇型のところを、削って、
現在の水滴の受けを嵌め込んでいます。
このことにより、
非常にリーズナブルでございます。
季節を問わずに使える古典柄の最高級蒔絵時代硯箱、
実際に、文房具としてご使用になりたい方にお勧めいたします。
外箱無。
¥132,000
消費税・送料込
内側
蓋表面
蓋表、雲間の月
蓋裏面
蓋表の小さな補修跡
内側 / 懸子(右側の嵌め込んだお皿部分)から秋草が繋がっています
内容品
削り跡と後補の水滴
裏面
蓋裏の傷み
この側面の上が几帳面。傷みがございます。
傷み
館の仔細まで蒔絵されているのが見えます