本紙 約109 × 39,3㎝
軸装 約191× 53,8㎝
絹本墨画

絹本に、とても丁寧に描かれた山水画です。

落款は「池勤」。
印章は「池勤之印」白文方印と
「公敏」朱文方印。
「勤」は20歳から27歳までの名前、
「公敏」は字です。

若い時代の作品とわかります。

手前に台地と林を配し、
大きな水辺で隔てられた遠景に入江と山々、
更に遙かに遠山を臨むのは、
大雅が最初に見つけた山水画の構図の一つです。

手前の2本の樹の左側の台地と、
上に描かれた入江は、
水平が斜めの印象です。
舟も斜めに進んでいます。

これは、大雅の初期作品によく見られる特徴。
最初の画業が、扇子に画を描くことだったために、
扇の画面構成によるものではと言われています。

樹の幹の周りに、たくさん点苔を描いたり、
幹のサイドにふさふさと筆を加えるのは、
大雅が学んだ中国のお手本の山水画の影響でしょう。

最初期の大雅作品は、
繊細な細く硬い筆致を重ねて描きます。
それは、20歳代の終わり位から、おおらかな筆に変化していきます。

本作品では、毛先の丸い筆を使って、
筆致は初めから終わりまでほとんど同じ太さ。

中国のお手本から脱し、
独自の画世界を見つけた、
そうわかる作品です。

絹本ならではの特性を生かし、
ごく薄い墨を深く滲ませて、
たっぷりと広がる水を表現しています。

同じように、
薄く外隈を掃くことで浮き出した最上部の遠山が神秘的です。

水辺の向うに描かれた、
入江の奥まで続く遠近感表現。
短い筆の濃淡を重ねた険しい山々の表現。

筆の代わりに指や爪で描く《指墨》によって、
筆先に頼らない画力を身に付けたことが、
この作品からわかります。

大きくはない画面に、
果てしなく広がる景色を見る
素晴らしい作品です。

右下に捺された遊印
「玉皇香案吏」朱文方印は、
名前を変えると印章を変えた大雅では唯一、
20歳代から、生涯使い続けた印象ですが、
一番最初は、《皇》の字の下部分
「王」の三画目と四画目の二本の線の間の両側には、
「- -」
がついていましたが、
すぐに削ってしまうので、
この「- -」の付いた「玉皇香案吏」印は、
この印章を使い始めた時期だけの印影です。
仔細画像でご覧ください。

無地誂え二重箱

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池大雅
享保8年(1723)~安永5年(1776)
諱/橆名(ありな)・勤
字/貨成・公敏
号/大雅堂・三岳道者・霞樵・九霞、他

京都に生まれ活躍した、絵師で書家、文人。
当時、応挙・若冲と並ぶ、大人気アーティストです。
20才代ですでに名声が高く、
旅が好きで日本各地を旅したため、
日本各地に大量に贋物が存在しています。

近世の絵師で、
国宝・重要文化財に指定されている作品は大雅が最も多いことは、
現在ではあまり知られていません。
文化庁にも数多くの大雅作品が収蔵されています。

川端康成、梅原龍三郎、谷川徹三ら
一流の文化人、画家たちも大雅に魅了され、
その作品を愛藏されていました。
国宝に指定されている「十便十宜図」は川端康成さんの旧蔵品です。

池大雅筆池勤落款絹本山水

池大雅筆池勤落款絹本山水
落款

遊印
 

 
水平が斜めなのがわかります
  
汚れ・傷み
 

 

無地ですが、できの良い誂え箱です。