本紙 約125 ×36,8 ㎝
軸装 約196,5 ×50,4㎝
紙本淡彩

お化けのように、
ぬ―っと迫り出した極端な形の山肌の崖の下に、
平らな道があって、
青い衣を着た高士が馬に乗り、
荷物を担いだお供を連れて進んで行きます。

岩肌の下側は、長い筆致で皴が描かれますが、
上の方は、輪郭だけで描き、
青墨の横線を重ねた背景で、
岩の形を白く浮き上がらせています。

山道に点々と跡が残ることや、
手前の木々の枯れた姿から、
雪の積もった冬の山道を行くように思えます。
人物にだけ色が差されていることで、
雪景の白が際立っています。

迷いも、無駄もない最小限の筆致で描かれた薄い青墨のおばけ岩の皴。
ギリギリです。

皴(シュン)は、岩肌を表現する時の筆跡のことです。
長く引いたり、
細かいのをたくさん重ねたり、
シボシボさせたり、
色んな種類がありますが、
どんな皴で表現するか、できるかが、
描く人の腕の見せ所でもあり、
画力がはっきり表れるところでもあります。

緊張感はあるか?
迷いはないか?
必ずそこに描かれなければならない一筋か?

大雅は、20歳代で全国区で人気がありましたので、
贋物がとっても多いんですが、
形だけ真似しても、
大雅にしか描けない線があるんです。

作品のタイトルを
「訪友図」としたのは、
山が真っ白になるほどこんな深い雪道を、
荷物を持っていくのは、
大切な人に、素敵なお土産を持っていく時だろうと、
この作品から読み取ったからです。
この巨岩を抜けた道の先に、
友人は住んでいるに違いありません。

淡い青墨で、柔らかに描かれた全体に、
岩の頭にだけ加えられた真っ黒な点苔が効いています。

岩山の背景は海でしょうか。

見ているうちに、
画の世界と自分の今いる現実世界の境界がなくなってしまう作品です。
胸に深く響く作品です。

霞樵
「橆名」「貨成」白文連印
「玉皇香案吏」朱文方印

落款と印章、筆致から
30歳代の最後から40歳代初めの作品と判断します。

本紙画面手前の岩の辺りから、
下部分の軸装に、
水がかかったであろう痕跡があり、
傷み汚れがございます。

作品の世界観を損ねるものではありませんが、
格安で、ご提供させていただきます。

画像でご確認ください。

無地合わせ箱

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池大雅
享保8年(1723)~安永5年(1776)
諱/橆名(ありな)・勤
字/貨成・公敏
号/大雅堂・三岳道者・霞樵・九霞、他

京都に生まれ活躍した、絵師で書家、文人。
当時、応挙・若冲と並ぶ、大人気アーティストです。
20才代ですでに名声が高く、
旅が好きで日本各地を旅したため、
日本各地に大量に贋物が存在しています。

近世の絵師で、
国宝・重要文化財に指定されている作品は大雅が最も多いことは、
現在ではあまり知られていません。
文化庁にも数多くの大雅作品が収蔵されています。

川端康成、梅原龍三郎、谷川徹三ら
一流の文化人、画家たちも大雅に魅了され、
その作品を愛藏されていました。
国宝に指定されている「十便十宜図」は川端康成さんの旧蔵品です。

池大雅筆雪山訪友図


 

傷み汚れ部分
 
裏面
 
箱が少し大きいです

巻き留めが少し傷み始めています