本紙 約130 ×54㎝
軸装 196,5 ×66㎝
紙本
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潮平両岸漫
風正一帆懸
癸未夏に 戴成
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潮平かにして、両岸漫(みだり)
風正しうして一帆懸る
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漫々として静かな大河に
順風を受けて一隻の舟が行く
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非常に美しい書姿です。
黒々と清澄な墨。
本作品を入手し、初めてお店の壁に掛けた時、
「ああ、気持ちがイイ」
と、自然と声がでました。
場の空気を一変させる力を持っています。
一文字一文字、主体が確立しています。
それぞれに自由で、強い存在感。
この詩は、唐詩選に載る〈王灣〉の五言律詩
「次北固山下」の内の二句です。
オリジナルの最初の句の五文字目は「闊」で、
大雅は「漫」に変えています。
大雅という人は、徒党を組まない人です。
生涯の親友もいたし、
門人も多く、
25回忌に80人以上の人々が集まろうとしたほど、
周りからとても慕われた人でした。
しかし、
例えば多くの絵師たちが自分の名前の一文字を弟子に与えたように、
(例えば圓山応挙→応瑞、岸駒→岸岱など)
流派を作ることは全くしていません。
たった一人で、芸術の大河を進んだ人です。
《一帆》は、
大河に一隻で漕ぎ出して、良い風を得て悠々と進む舟の姿に、
大雅自身を重ねているように思われます。
中国文化に強くあこがれた大雅が、
オリジナルを読み込み、
その時のパッションで、アレンジを加えたんです。
一文字一文字が独立し、
それぞれに完結した姿であることが、
詩の内容を的確に示しています。
款記に「夏に」とあります。
文字の間隔を空けた書姿が、
暑い日に、風通しを感じさせてくれます。
詩・書が一体となった、
大雅でなければ作れなかった書世界です。
「癸未」は宝暦13年(1764)、大雅41歳。
「蘭亭曲水・龍山勝会図屏風」(重要文化財・静岡県立美術館蔵)、
「青緑山水画帖」(サントリー美術館蔵)、
「富岳・終南山・早發白帝城図」(千葉県立美術館蔵)、
など、名品を製作した充実した時期の作品です。
落款の「戴成」は、
27歳(寛延2年・1749)から使い始めた字(あざな)。
「九霞山人」白文方印
「池橆名印」朱文方印
とても良い作品ですが、
シミがきついことと、軸装がチープであることから、
格安にさせていただいています。
本紙に折れ、修復痕がございますが、
鑑賞には差し障りありません。
箱無
¥120,000
消費税・送料込
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池大雅
享保8年(1723)~安永5年(1776)
諱/橆名(ありな)・勤
字/貨成・公敏
号/大雅堂・三岳道者・霞樵・九霞、他
京都に生まれ活躍した、絵師で書家、文人。
当時、応挙・若冲と並ぶ、大人気アーティストです。
20才代ですでに名声が高く、
旅が好きで日本各地を旅したため、
日本各地に大量に贋物が存在しています。
近世の絵師で、
国宝・重要文化財に指定されている作品は大雅が最も多いことは、
現在ではあまり知られていません。
文化庁にも数多くの大雅作品が収蔵されています。
川端康成、梅原龍三郎、谷川徹三ら
一流の文化人、画家たちも大雅に魅了され、
その作品を愛藏されていました。
国宝に指定されている「十便十宜図」は川端康成さんの旧蔵品です。
落款・印章部分
墨が余白に付いています
あまりにたっぷり墨を含ませ過ぎて、紙が撚れるほどです
いかに熱のある筆致かが、はっきり残っています
傷み修復跡・シミ
軸先はプラスチック