本紙 81,8 ×27㎝
軸装 163 ×30㎝
紙本
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小山富士夫
明治33年(1900)~昭和50年(1975)
世界的な陶磁器研究家、陶芸家。
雅号/古山子(こざんし)
この、
目と目がとっても離れた顔みたいな
《花》の字は、
古山子の特徴的な花の文字の姿です。
正しい書き順ではなく、
たっぷりと墨を含ませた筆で、
草冠の“ちょんちょん“を交差させ
一文字は、
右から左に降ろして、
また右上に戻している筆跡です。
筆の想いは収まらず、
その先に幽かに現れてしまっています。
脚部の《化》は、
「心」にも見えます。
その下、
なんとも強い《男》!
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小山富士夫さんの陶芸作品は、
どれも上品です。
茶碗や盃は、愛らしい丸みと、
決してもたもたしないという
同居しにくい要素がピタッと一緒に形を成しています。
銘も、
常に小さく、
ちょこっと入れられています。
なので、初めてこの書を見たときは驚きました。
表に出さない激しい情熱を、
内在された方なんですね。
自らが強く推して、
鎌倉時代の古瀬戸として重要文化財指定を受けた
「永仁二年」と記された瓶子は、
実は友人の陶芸家加藤唐九郎の作品であると判明し、
文部技官・文化財専門審議会委員を辞職した小山富士夫。
彼への私の知識は、書かれたものを読んだにすぎませんが、
中国に渡って古窯址を現地調査し、
新発見されたり、
古陶磁の研究に情熱を注がれ、
その後の指標となる陶磁全集を出版されたり、
文化財を後の世に残した仕事の業績の偉大さ。
永仁の壺の騒動の後、
何も語らなかった潔さ、上品な生き様。
器の大きさ。
小山富士夫さんの作品からは、
その品格の高さと、おおらかさを感じていました。
この書から、
初めて、
胸の中の情熱の熱さを知りました。
□
《男》
に侵蝕された紙のスペースに、
バランス良く、
ちんまりと、粗野に書かれた《情》。
蟻んこみたいに記された「古山子」。
古山子の想い、人となりを、
さまざま想像する一幅です。
共箱
タトウ付き(一部欠損あり)
ごく僅かにシミが出始めています。
画像でご確認ください。
¥275,000
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