蓋 約12,3 ×19㎝
高台 約10 ×16,9㎝
高さ 約12,7㎝
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蒟醤(きんま)は、
金間・金馬とも表記されるタイ、ミャンマー(旧ビルマ)の漆芸品で、
江戸時代初期、朱印船貿易によってもたらされました。
本作品のように黒漆の表面を彫って、
その凹み部分に赤漆を充填して模様を表すのはタイの蒟醤です。
多く、蒟醤は細く割いた竹ひごを編んで形が作られますが(籃胎)、
本作品は木胎です。
松永耳庵旧蔵の蒟醤茶箱(東京国立博物館蔵/16~17c)も木胎です。
木胎も古い時代から作られていたことがわかります。
16~17世紀の蒟醤は、赤漆がもっと朱色ですので、
本作品は少し時代が下がるものと思われますが、
漆の表面に現れた非常に細かな経年によるシワから、
日本の江戸時代中期以前の作品と考えます。
上が大きく、尻すぼみで、
立体を成型する四方の辺に少しアールがかかっています。
甲もカマボコ型のアールがかかって、可愛げな形です。
日本の箱にはない、極端に反り返った形の高台。
内側は表よりも深く刳ってあります。
向かって右手にギャーと口を開いた瑞鳥。
左手にムクムクの瑞獣。
とても南国的、大胆でユーモアたっぷり!な表現。
異国臭プンプンです。
おおらかなデザインですが、縁部はとても細かい剣先模様が敷き詰められ、
それは、蓋を開けた時の合口部分にも密に施されています。
底と高台の内側部分は、
塗られた黒漆が薄く、木胎の質感が見えています。
非常に荒い造りです。
日本の職人の仕事のように、精緻なつくりではなく、
成長の早い熱帯の樹木にざっくりと手を加え、
南方の工芸品の色が濃く表れています。
蒟醤は、茶人に愛好されました。
この粗野な感じが、その琴線に触れるのでしょう。
いちばん有名な蒟醤の茶箱は表千家の伝世品ですね。
本作品は、蓋や本体の合口部分や高台など、かなりの部分に修復痕がございます。
蓋の甲に真ん中に断裂がございます。
漆の表面に細かな亀裂もございますが、これは南方や中国の漆芸品に年月を経て現れる現象です。
経年で荒れ、傷みをざっくり直してあることで、
渡来品であることがよくわかるお品です。
瑕疵はできるだけ画像にしましたが、
是非お手に取ってお確かめください。
古いビロードの仕覆
内も極上の古裂が使われています。
時代箱付
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上から
蓋上拡大
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底から
内側
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細部の仕事が可愛い
蓋裏同じ面別角度
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仕覆内側