本紙 約131,7 ×56,8㎝
軸装 約218,5 ×73,3㎝
紙本墨画

かなり大きな作品です。
重要文化財の「漁楽図 /ぎょらくず」(京都国立博物館蔵)と比べ、
縦は18㎝弱短く、
幅は3㎝長い作品です。
漁楽図をご覧になったことのある方でしたら、
サイズ感を想像していただけるでしょう。

漁楽図と同じく紙本に、墨だけで描かれた大作。
漁楽図が、点描によって水辺の人の暮らしを描いたのと対照的に、

本作品は、短い皴で、仙人の住む異境・蓬莱山を描いています。

執拗にウネウネぐるぐると複雑に描き込まれた岩山、
密に施された魚子皴の表現、
緊密な構図。
圧巻です。

画面真ん中に、
一際強い存在感の岩塊が描かれ、強烈なインパクトです。
とても強い線でアウトラインが引かれています。
実景では一番手前になる内側の皴ほど薄い墨で描かれます。
自然の摂理を無視した表現です。

岩塊の上に、松を主とした樹々が茂り、
黒々と引かれた岩の輪郭と、密に施された魚子皴によって立ち塞がり
後ろにある立派な楼閣への視界を遮っています。

楼閣の後ろに聳える奇怪な姿の岩山の筆致は、
画面真ん中の巨岩の中ほどととてもよく似ていて、
これでもかと重なり合うウネウネに、
薄い墨の短い皴を執拗に執拗に施しています。

こんな凄い画に出逢ってしまった!

胸の中に手を突っ込まれて、
血が沸き、全身の毛という毛が立ってしまう感覚です。

鳥肌がとまらない!

岩があって、
松があって、
楼閣があって、
その後ろに山があるはずなのに、
遠近感はありません。
めくるめく圧倒的迫力の画世界です。

遙か遠くに更なる秘境が、蜃気楼のように見えています。

入り込んだら二度と出てこれない時空間。
一度見たら、忘れられない作品です。

遙かな高い峰に流れる水が、
楼閣の後ろで滝となった落ち、
真ん中の巨岩の後ろを流れ、
手前左手で大河として姿を現わします。
轟々と音が聞こえそうな豊かな流れです。

中ほど上の画面の左端に、手前にある崖が描かれていますね。

これによって、
この楼閣の建つ高い岩山はぽつんと出現したのではなく、
岩山の連なる秘境にあると暗示されます。

つがいの鶴が飛び、
つがいの鹿が顔を見せています。

大雅の山水図の多くは浅絳山水(藍と代赭が施された墨画)か、
墨画に淡い色を加えた淡彩です。

本作品は、敢えて色を使わずに、
墨だけでどこまで表現できるかに挑んだ作品と存じます。

落款は「橆名」(隷体)
「弎岳道者」白文方印方印
「池橆名印」朱文方印

どちらも30才代後期から生涯使われた印章です。
この二つが同時に使われた作品は、
池大雅作品集(昭和35年・中央公論美術出版)掲載811作品の中では、
「日本十二景」(43才)、
「淵明擧觴図」(40才前後)
「谿山秋雨図」(40才代中期)
の3例。

ただし、「日本十二景図」(十二幅/川端康成旧蔵)の中では、
宮島図に「池橆名印」朱文方印が捺され、
宮島図・三保浦図以外の10幅に「弎岳道者」白文方印が捺されており、
同画面に捺されている例ではありません。

本紙にも、表具にも目立つ瑕疵は全くありません。
宝尽し柄の緞子の中廻し、
龍鶴丸文の金襴上下一文字、
極上の象牙軸先。

大雅堂六世霞邨による昭和24年の鑑定書き付二重箱

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池大雅
享保8年(1723)~安永5年(1776)
諱/橆名(ありな)・勤
字/貨成・公敏
号/大雅堂・三岳道者・霞樵・九霞、他

京都に生まれ活躍した、絵師で書家、文人。
当時、応挙・若冲と並ぶ、大人気アーティストです。
20才代ですでに名声が高く、
旅が好きで日本各地を旅したため、
日本各地に大量に贋物が存在しています。

近世の絵師で、
国宝・重要文化財に指定されている作品は大雅が最も多いことは、
現在ではあまり知られていません。
文化庁にも数多くの大雅作品が収蔵されています。

川端康成、梅原龍三郎、谷川徹三ら
一流の文化人、画家たちも大雅に魅了され、
その作品を愛藏されていました。
国宝に指定されている「十便十宜図」は川端康成さんの旧蔵品です。

池大雅筆水墨蓬莱仙境図





池大雅筆水墨蓬莱仙境図鶴はここです
 池大雅筆水墨蓬莱仙境図
鹿はここです
池大雅筆水墨蓬莱仙境図 
谷川の行方
 
谷川の行方
池大雅筆水墨蓬莱仙境図
極上の表具裂
 
裏から見ると、軸の巻き留めが僅かに切れ初めていますが表には影響がございません
 
内箱蓋裏/ 外箱内箱
 
内箱蓋表印章