軸装 縦121 ×横42㎝
本紙 縦43,5 ×横31,3㎝
紙本

会津八一
明治14年(1881)~昭和31年(1956)
歌人・書家・美術史家
新潟県新潟市出身
雅号/秋艸道人・渾斎

かすがのの
よを
さむみ
かも
さをしかの
まちのちまたを
なきわたり
ゆく

「朔」は一日生まれの八一の銘の一つです。

古都奈良を愛した八一が、定宿で、
寒い夜
ねぐらの群れを離れた牡鹿の響き渡る鳴き声に
自分の姿を映した一句。

孤高の姿と
寂寥感が、
澄んだ空気と共に胸のなかに膨らみます。

とても面白いのは
この作品が、実際に使われていたうちわ(団扇)にかかれている事。

夏に涼をとるための団扇に
凍てつく寒さの一句を書いて
心の中から涼しさを得る
粋な一品。

八一らしい、一切装飾のない
かつ、力のある気持ちの良い書です。
補強のための柿渋や骨の跡が
良い味わいとなっています。

新潟県で見つけました。
団扇として完成された後で
書かれたことが筆跡からわかります。
非常に簡易な表具でしたので
八一が知人の使っていた団扇に
一句書いたものかと想像します。

書に相応しい古更紗の一文字
目の粗い裂を廻したセンスの良い表具に直しました。

八一さんの粋な計らいは、
寒い季節にも、暑い季節にも色を添える
素敵な一品となりました。

合わせ箱

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「朔」

団扇の骨の凸部分にだけ墨がのっているのがご覧いただけますでしょうか。

上下一文字の古更紗

竹節軸先


会津八一団扇
会津八一団扇
本紙に団扇の骨のあった痕跡がございますが、台の紙にはほぼぴったりと貼られています
会津八一団扇
本紙のコンディションは良くありませんが
八一の筆痕は黒々と綺麗に残っています




天地は、漆を薄く刷いた紙を用いております
天の紙の色が地に比べ薄いです
会津八一団扇


中廻しは薄い古裂です
透けているのがお分かりいただけると存じます
ピンクベージュより桃色が濃いお色味です