蓋径 約7㎝
高さ 約7㎝
江戸時代
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碁笥底(ごけぞこ)で、金輪寺のように少しだけ大きな蓋の薄茶器。
金輪寺はずん胴ですが、本作品は口に向かって
径がやや大きく作られています。
外側は黒漆に金蒔絵で桜と柳が蒔絵されています。
蒔絵の金は、本金で、かなり厚くぽってりと蒔かれ、
黒い地漆は時代を経て、飴色に変化しています。
蓋の甲は、枝をぐるっと丸く収めた柳の一枝の前に桜の一枝が重ねられ、
団文に描かれます。
側面は、対をなす反対側にそれぞれ一枝ずつ、のびのびと描かれます。
特に柳の伸び伸び振りは、類を見ません。
写実的でもなく、シンボル化されているわけでもなく、
不思議な絵です。
桜の葉っぱは、リアルな桜の葉と形態が違いますし、
柳の葉も、実際にはありえないエレガントな生え方です。
ところで、この薄茶器には、細工の良い箱が誂えられていて、
箱に塗師や蒔絵師の銘はなく、
「都」と銘だけが蓋上に墨書きされています。
「古今和歌集」に収められた素性法師の、
《見渡せば柳桜をこきまぜて 都ぞ春の錦なりける》
からの銘でしょう。
ただ、自然の姿の美しさを茶器に写すのではなく、
自然の美を、人を通して芸術の美に昇華する。
その頂点が、都の貴族文化なのかな。
だからこの作品のイメージ的な柳と桜の姿は、「都」と銘されたのかしら、と私は思いました。
描いた対象をそのまま名前にするのではなく、
高い教養と磨かれたセンスのネーミングです。
箱の蓋の裏に、
「田川宗直へ 於くる」花押
の、墨書きがあります。
蓋は四方桟で、箱本体も組み込み式の造り。
紐は箱の底の材の中を通す(表面に出ない)ように作られており、
非常に手の込んだ良い誂え箱です。
紐も高級な絹製ですが、かなり傷んでいます。
作品の内側は黒漆です。
蓋がややきつめですので、茶箱茶籠などでお茶を運ぶ時に、
きっちり締まって重宝されると存じます。
二重の正絹の四方の二隅を縫い合わせて筒とした仕覆が誂えられています。
金蒔絵のクオリティー、箱や仕覆の次第などから、
もともとハイクラスのお品であることがわかります。
¥45000
消費税・送料込
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内
底裏
箱蓋裏/ 表
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