茶匙 長さ 約15,5㎝ 一番広い幅 約1,6㎝
羽根 長さ 約15㎝ 取っ手部長さ 約8,8㎝
□
箱の蓋表に書かれた「梅露」は
茶道具商として大変名高い、水戸幸さんの二代目、吉田五郎三郎さんのお茶名。
そのご自宅茶室は「梅露庵」。
益田鈍翁、根津青山、高橋箒庵、松永耳庵など、
当時の日本経済のトップリーダーにして、大茶人でもあった方々と
大変に親交の深かった超一流茶道具商であり茶人。
本作品はその、梅露さんのお好みで作られた水屋道具と考えられます。
蓋裏に墨書き銘をされた「澤田宗味」は、
明治8年(1875)金沢生まれの銀師(しろがねし)。
銀製茶道具製作の職人で、
昭和18年(1943)に畠山即翁主催の益田鈍翁追善茶会の薄茶席で、
即翁さんの代点を務めたほどの茶人でもあった、
と資料に記されています。
即翁さんの注文による、
宗味作「銀製皆具」「銀凹薬鑵」「銀製銚子」「銀製青海盆」が、
畠山美術館のご所蔵です。
本作品は、梅露さんのお茶会の記念品と考えられます。
茶匙は掬う部分と、取っ手の部分が別々に作られ、
程よく美しい丸みで作られた掬う部分を、
銀板を丸めて包み込むように取っ手がつけられ、
表部分は接合がわからないよう成型され、
裏側はデザインとして銀の重なりを敢えて残しています。
素晴らしい仕事です。
羽根を持つ部分も、同様に銀板を丸めて筒としています。
茶杓で言うなら切留に当たる下部は、
柔らかな丸みを帯びています。
銀の美しさが際立つ造形です。
高価な素材で注文製作された、贅をつくした水屋道具。
梅露さんの凄さ、当時の経済茶人たちのスケールの大きさや、
お茶への熱量の高さに、
ただただ感嘆するばかりです。
こんな道具ですと、
お茶を篩って茶器に入れる面倒な作業も、
心躍る仕事になると存じます。
箱も差し込み式の手のかかった造りです。
引き出す手がかり部分に、黒柿が一文字に埋め込まれています。
弊店には、やはり梅露さんの記念品と思われる茶器がございますが、
やはり差し込み式の蓋に、黒柿が施され、
この箱の仕様が梅露さんのお好みであったことが推察できます。
箱の、お品を置く部分に欠損がございます。
そのほか、コンディションは画像をご確認ください。
¥250000
消費税・送料込
茶匙裏面
小羽/ 表・裏
箱蓋裏書
蓋表と参考作品蓋表
箱裏
箱内
差し込み式の蓋は、箱製作に格段の技術と手間が必要です