縦 約20,9㎝
横 約19,4㎝
高さ 約4,7㎝
江戸時代

ほぼ方形、印籠蓋造りで几帳面の施された丸角の硯箱。

蓋表右下に、薄肉金高蒔絵で龍が描かれます。
その鱗一枚一枚のリアルなこと!
身震いする触感がざわざわと伝わります。

そしてその眼は玉眼(ぎょくがん)。
水晶などの透明な素材に裏から彩色して嵌め込まれています。
圧倒的にリアルで、古い仏像などの眼に用いられるやり方です。
硯箱の装飾表現には珍しい技法です。

激しい風によって逆巻く波と雲が、金銀の薄肉と巻き暈しで立体感をもって描かれます。
風は下から吹いているのでしょう。
龍の長い髭は、ほとんど垂直になびきます。

渦を描いた雲が上に続いて、
荒々しい龍の脚や爪が雲間から見えています。
なんてすばらしい蒔絵表現!

几帳面は金が厚く蒔かれ、所々に稲妻が金で描かれます。
雷雲と共に現れる龍に添えられた、心憎い装飾です。
蓋表の梨地に描かれた雲龍の図が、すっかり金で縁取られることで額縁的な効果を上げ、
より格調高く、シマった印象です。

身は、左側に黄銅赤胴を以って作られた長方形の水滴と、縁に金を蒔いた硯が嵌め込まれ、
右側に懸子を納めます。
嵌め板は梨地で、上辺に雲、下辺に若松が金蒔絵で、
懸子は、やはり梨地に若松が金蒔絵で描かれます。
非常に精緻な蒔絵です。

蓋裏は、表と全く違う趣。

密に蒔かれた梨地に、薄肉高蒔絵で、
なだらかな山が、黒をべースに山頂付近は銀粉で暈しがほどこされ、
少し梨地紛が散らされます。
山頂から中腹右へモヒカンみたいな金蒔絵の松林。

その右手前、絵画的に表現された岩の強い存在感。
肉合(ししあい)蒔絵で立体的に盛り盛りです。
金の輪郭が際立ちます。
金銀の切金(きりかね)を置いています。

様々な樹木が、それぞれ違った表情で描かれます。
岩の上から下へ垂れる柳の樹肌のなんと繊細な質感であることか!
水面を表す、細い細い金の線然り。

感動的な蒔絵表現です。

蒔絵技術が高度に発達した江戸時代の優品と存じます。

蓋表の上部の雲に大き目の、爪の先に小さなアタリがございます。
蓋の四隅に修復の痕跡がございますが、
上手い修復でございます。
他に経年による断紋、小アタリ、擦れなどがございます。
コンデションはかなり良いです。

硯は、外れません。
使用後の墨により、枠に癒着したものと思われます。

これほど極上の硯箱を、
床飾りとしてだけでなく、実際に使用されていた旧蔵者の生き様に感動します。
修復にお金を厭わない愛玩によって、
見事な姿のまま今に伝えられたのでしょう。

無地箱

¥400000
消費税・送料込

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時代雲龍蒔絵硯箱
玉眼
 
几帳面/雷紋蒔絵

 時代雲龍蒔絵硯箱 
身(蓋を開けたところ)/硯部・懸子を外したところ
時代雲龍蒔絵硯箱
蓋裏
時代雲龍蒔絵硯箱
蓋裏部分
 
蓋裏部分

蓋表アタリ部分
 

 

 
硯部・懸子裏面/ 箱裏面

擦れがございます
 
側面すべてに銀雲と切金が施されています
 
内に一か所疵/ 同じ部分拡大
 
蓋内修復状況
 
蓋表修復状況