本紙 97,5× 35,5㎝
軸装 174,5× 47,5㎝
絹本著色

王義之の蘭亭序。
会稽山陰の蘭亭に、老いも若きも賢者が集い
流觴曲水を楽しみます。
水の流れに浮かべられた觴(さかずき)が自分の目の前を通る短い間に、
詩を作る、教養人仲間の遊びです。
作りそこなったら、一杯飲まなきゃいけません。

大雅さんが思い描いた文人の究極世界です。

なんて楽しそうな人々!

寝転がったり、
大きな岩に詩を書いたり、
思い思いに楽しんでいます。

蘭亭敘には
「̪̪雖無絲竹管弦之盛/絲竹管弦の盛無と雖も」
とありますが、
大雅さんは楽器を弾いて楽しむ人も描いています。

お酒の入った小さな盃が流れていますね。

上流には
かわいい水鳥のつがい。

大雅さんにしか描けない理想郷です。

画面の、ど真ん中手前に松が描かれています。
この樹は、俗世界と理想世界の結界です。

橋を渡り、俗世界からやってくる人を、
既に結界の内のノンストレスワールドにいる人が手招いています。

見る人をも誘っています。

橆名寫
「深泥池氏」白文方印
「橆名」白文方印

この作品は、本紙・表具に汚れがございます。
鑑賞に差し障るものではございません。

無地箱

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池大雅
享保8年(1723)~安永5年(1776)
諱/橆名(ありな)・勤
字/貨成・公敏
号/大雅堂・三岳道者・霞樵・九霞、他

京都に生まれ活躍した、絵師で書家、文人。
当時、応挙・若冲と並ぶ、大人気アーティストです。
20才代ですでに名声が高く、
旅が好きで日本各地を旅したため、
日本各地に大量に贋物が存在しています。

近世の絵師で、
国宝・重要文化財に指定されている作品は大雅が最も多いことは、
現在ではあまり知られていません。
文化庁にも数多くの大雅作品が収蔵されています。

川端康成、梅原龍三郎、谷川徹三ら
一流の文化人、画家たちも大雅に魅了され、
その作品を愛藏されていました。
国宝に指定されている「十便十宜図」は川端康成さんの旧蔵品です。