本紙 約122 × 27,1㎝
軸装 約193 × 40,8㎝
紙本墨画

款記は「池勤」。
「勤」は大雅が20才から使い始め、
27才で「無名/ありな」と改めるまで使った名前です。

池大雅作品集(昭和35年中央公論美術出版)掲載画作品の内、
款記によって、無名に改名するまでに描かれたことが確定できる作品は14点。
その中で「池勤」と記されていないのは2作品だけで、
ほとんどこの名を記しています。

「池」の字の、偏と旁をつなげて書く場合、
旁部「也」が、サンズイよりもかなり高い位置に書かれるのが特徴です。

本作品では、美しい真っ黒な墨で、
「双幹衝天」のタイトルと同じくらい大きな字で「池勤」と書かれています。
「良い画が描けた」という大雅の自負が、款記に表れているように思います。

「二つの幹が天を衝く」

竹を描くときに、
薄い墨と濃い墨の2本を描くのは、
大雅の一つのスタイルといっていいと思います。
◆参考作品《風篁簫瑟図》◆

太い竹は薄い墨で、ほぼまっすぐに描かれます。
節の部分だけ濃い墨を使っています。
水をたっぷりふくんだ薄墨の竹の幹に、真っ黒で鋭角な筆致の節の緩急。
大雅の画には心地よいリズムがあります。
年を取ってからの作品では、この節部分は左右に離れ、蟹の目みたいに描かれるようになるんです。

濃い墨で描かれた細い竹は、
素晴らしい勢いです。
タイトルの通り天を衝くように強い力で上に向かっています。
葉っぱも、迷いのない潔い筆致で上に伸びています。
後ろの薄い太い竹にはほとんど葉がついておらず、
手前の真っ黒な美しい葉の姿が際立ちます。

葉っぱに先の空間に、「ピッ」と一筆を加えるのも、
大雅の竹の特徴です。

竹の姿に装飾性を持たせていない、非常にフレッシュな作品です。
20才代の大雅の若さが瑞々しく、勢いがあります。

印章は《公敏氏》白文方印。
「公敏」は、「勤」の名を使った時代の字(あざな)です。
この印章は、20才代と思われる作品にのみ捺されていて、
池大雅作品集掲載作品の中では、3作品に使用されています。

紙のヤケや大きな皺がなく、
かなり良いコンディションです。

壽を中心に宝尽くしを丸紋に織り込んだ、
高級な絖がたっぷりと使われた軸装。
軸先は象牙です。

本紙に、圧されて開いたであろう傷みと、
藍の絵の具の着いた部分がございます。
鑑賞に差し障りございません。
画像でご確認ください。

旧蔵者墨書き誂え箱(欠損部分有)

¥220000
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池大雅筆双幹衝天図

池大雅筆双幹衝天図


この、竹の節を輪状に描いた姿は、相国寺に伊藤若冲が描いた竹の表現に近似しています
この時代の流行りだったのかな
 
左・藍の着いた部分/ 右・圧されて開いたであろう傷み部分
  

 

 
箱の欠損部分

蓋側面に穴有

池大雅
享保8年(1723)~安永5年(1776)
諱/橆名(ありな)・勤
字/貨成・公敏
号/大雅堂・三岳道者・霞樵・九霞、他

京都に生まれ活躍した、絵師で書家、文人。
当時、応挙・若冲と並ぶ、大人気アーティストです。
20才代ですでに名声が高く、
旅が好きで日本各地を旅したため、
日本各地に大量に贋物が存在しています。

近世の絵師で、
国宝・重要文化財に指定されている作品は大雅が最も多いことは、
現在ではあまり知られていません。
文化庁にも数多くの大雅作品が収蔵されています。

川端康成、梅原龍三郎、谷川徹三ら
一流の文化人、画家たちも大雅に魅了され、
その作品を愛藏されていました。
国宝に指定されている「十便十宜図」は川端康成さんの旧蔵品です。