本紙 31 ×16㎝
軸装 141 ×25,4㎝
紙本

池大雅
享保8年(1723)~安永5年(1776)
諱/橆名(ありな)・勤
字/貨成・公敏
号/大雅堂・三岳道者・霞樵・九霞、他

京都に生まれ活躍した、絵師で書家、文人。
当時、応挙・若冲と並ぶ、大人気アーティストです。
20才代ですでに名声が高く、
旅が好きで日本各地を旅したため、
日本各地に大量に贋物が存在しています。

近世の絵師で、
国宝・重要文化財に指定されている作品は、
大雅が最も多いことは、
現在ではあまり知られていません。
文化庁にも数多くの大雅作品が収蔵されています。

川端康成、梅原龍三郎、谷川徹三ら
一流の文化人、画家たちも大雅に魅了され、
その作品を愛藏されていました。
国宝に指定されている「十便十宜図」は川端康成さんの旧蔵品です。

□ □ □

聞日本國圓載上人挟儒家洎釋典以行更作
九流三蔵一時傾
萬軸光凌渤海聲
従此遺編東去後
却應荒外有諸生
陸龜蒙

前置きの言葉の順番が入れ替わったり、
一部文字を変えていますが、
清朝の名君・康熙帝(在位1661~1722)勅撰漢詩集・全唐詩に入っている
唐の詩人・陸龜蒙の詩の一部分と、ほぼ同じ内容です。

当時、中国の文化芸術に、
日本の文化人・教養人たちはめちゃくちゃに憧れていました。
中国の勅撰詩集に掲載されている詩を学び、
その鑑賞を楽しむ事は、
大雅の血肉となっていたことでしょう。

すっかり自分のモノになっていたので、
少しくらい違っている事なんか
たいした問題じゃないんです。

大雅は自分の中にある陸龜蒙の詩に、
大雅しか表せない姿を与えています。

ちょうど、
スコア(楽譜)に記号で残された音楽を
独自の深い理解、
磨き上げた演奏技術で演奏する
音楽家のように。

これは私の妄想ではありません。

大雅の40歳代の基準印の一つ
朱文長方印の文字「前身相馬方九皐」は、
本当は
「前身相馬【九方皐】」
【九方皐】は、中国の古典・列子に書かれている
馬の目利きの名前です。

「九」と「方」の順番を間違えて、
印章に彫っちゃって、
ずっとそのまま愛用していたんです。

大雅の20歳代からの大親友の一人、
高芙蓉(こうふよう)は、
日本の印章制度を確立し、《印聖》とまで呼ばれた人です。

大雅は、印章というものを軽く考えて、
間違いをほったらかしにした訳ではなく、
あえて、そのまま使ったんです。

「わかりやすく目に見えるモノはどうでもいいんだ。」
「中身が自分の血肉になってることが大事だよ。」

文字をほぼ同じ大きさに、縦一直線に書いて、
所々の一画を太く、
アクセントにして楽しんでいます。

全く力みのない、
主体性を失わない文字姿です。

大雅が禅を肚に得ていたことがわかります。

橆名
《遵生》朱文長方印
《池橆名印》白文方印
《弎岳道者》白文方印

本紙に傷みがございますが、
鑑賞には全く問題ありません。

文人の書に相応しい良い表具です。

合わせ箱を入手中です。

¥165,000
消費税・送料込

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