本紙 約118 ×53,5㎝
軸装 約196 ×68,9㎝
紙本墨画

「擬白隠畫伯」

白隠慧鶴
貞享2(1685)~明和5(1768)
江戸時代中期の禅僧です。
白隠の描いた庶民にもわかりやすい禅画は、古美術界で非常に高く評価されています。
当然ながら墨蹟も素晴らしいです。

大雅には
「奉 白隠老禅師榻下(とうか)請教」
と記された、白隠に奉じた偈があり、
それは寛延4年(1751)、
京都に泊まった白隠のもとに大雅が参禅した時の作品で、
白隠67歳、大雅29歳。
大雅が最初に白隠に相見したのは26歳であったといわれています。

ほかにも、大雅が画を描き、白隠が賛を書いた
「狸(葛の葉)図」、
「六祖唐碓図」
の存在が知られています。

本作品は、針に糸を通そうとする僧侶の図。
「擬(ならう)白隠畫伯」
と大雅が題していますので、
白隠の禅画を写した作品と一見できます。

ただ、
大雅が「擬○○」とか「仿○○」と題して、
「○○さんに倣いました」
と記す場合、それは「作品そのものを写しました」の意ではなく、
「○○さんに心の底から敬意を表します」とか
「○○さんからインスパイアされて描きました」を意味しています。

「擬光悦」と款した作品にも、
「擬如拙道人筆」と款した屏風(重要文化財)にも、
「擬金画使」と款した作品にも、
それぞれの絵師に同じモチーフのオリジナル作品があるわけではないんです。

それとも、この作品には、同じモチーフの白隠の作品があるのかもしれませんが、
不勉強により、私は存じません。

「針に糸を通す」意の禅語かエピソードがあるのでしょう。
僧の持つ糸がぴゅーっと弧を描いて長いです。
最小限の筆致で、
根底にあるものの深さを、ざっくりと切り取っています。
顎のしっかりした骨太の僧の不思議な笑顔。
袖の筆致が太い!

「霞樵」朱文聯印、
「前身相馬方九皐」朱文長方印は、共に、
30歳代半ばから、生涯使われ、最も使用頻度の高い印章の2つで、
この二つが同時に捺された作品は非常に多いです。

款記の「橆名」書き方、
最小限の大胆な筆致から、
画業の窮まる40歳代後半~晩年の作品と推測いたします。

「擬白隠」と書かれた作品は私は初めて見ました。
大雅は禅僧ではありませんが、その作品制作の根底には禅の精神があります。
その師は白隠です。
貴重で珍しい作品です。

本紙に汚れ傷み、折れがございます。

無地誂え箱

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池大雅筆擬白隠畫伯
 
款記落款部分
 
コンディション仔細画像
 

 


差し込み式の手のかかった箱が誂えられています
  
丁寧に軸装され直されていますが、裂が内容に合っていません/ 唐木に象牙を嵌めた軸先

池大雅
享保8年(1723)~安永5年(1776)
諱/橆名(ありな)・勤
字/貨成・公敏
号/大雅堂・三岳道者・霞樵・九霞、他

京都に生まれ活躍した、絵師で書家、文人。
当時、応挙・若冲と並ぶ、大人気アーティストです。
20才代ですでに名声が高く、
旅が好きで日本各地を旅したため、
日本各地に大量に贋物が存在しています。

近世の絵師で、
国宝・重要文化財に指定されている作品は大雅が最も多いことは、
現在ではあまり知られていません。
文化庁にも数多くの大雅作品が収蔵されています。

川端康成、梅原龍三郎、谷川徹三ら
一流の文化人、画家たちも大雅に魅了され、
その作品を愛藏されていました。
国宝に指定されている「十便十宜図」は川端康成さんの旧蔵品です。