本紙 115,5× 27㎝
軸装 194× 41,2㎝
紙本墨画

強い風を受けて揺れる二本の竹。
葉っぱが飛ばされていく様子が見事に表現され
見る者の心までざわつかせます。

一本は濃い墨で、
もう一本は薄い墨で描かれます。
大雅はいくつも竹が風に吹かれる画を描いていて、
大抵、本作品と同じように濃い薄いの2本が対です。

葉が「#」型に表されているのには
意味があるのでしょう。

重要文化財「柳下童子図屏風」
(京都府蔵・旧池大雅美術館コレクション)
の柳の葉は、
本作品の竹の葉と同じように交差して描かれています。
大雅さんが、この描き方にこだわっていたことは確かなようです。

風になびいた葉の動く様子の、
瞬間を切り取った姿にも思えます。
竹が風に揺れると、葉っぱ同士が重なって擦れ、サワサワと音を立てます。
そのサワサワを墨で表現しているのかもしれません。

落款の「竹〇(←該当の文字がパソコン表示に無し)」は、
他に見たことのない款記です。
この文字は「居」の古い字体。
「竹居」は大雅さんが20歳代で使っていた号の一つです。
整った姿の楷書で書かれています。

「竹居」の印章は、何種類かあり使用例がありますが、
款記として記された例は、私の知る限り、
本作品と、「梅花孤亭図」(寛延二年27才)、旧池大雅美術館作品に1点の3作品だけです。
珍しい款記の上、この異字体は本作品のみです。

「玉皇香案吏」朱文方印

この印章は、25,6才の最初期から、
40才代中期と考えられる作品に使用される印章です。
最初期は、「皇」の下部分「王」の字の、
真ん中の横画と、下の横画の間に《- -》があり、
すぐに削り取られています。

款記と印章から、20才代後半の作品と考えられます。

上質な象牙の軸先です。

本紙に折れがあります
本紙や表具に僅かな汚れがございます。

無地合わせ箱

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池大雅
諱/橆名(ありな)・勤
字/貨成・公敏
号/大雅堂・三岳道者・霞樵・九霞、他

京都に生まれ活躍した、絵師で書家、文人。
当時、応挙・若冲と並ぶ、大人気アーティストです。
20才代ですでに名声が高く、
旅が好きで日本各地を旅したため、
日本各地に大量に贋物が存在しています。

近世の絵師で、
国宝・重要文化財に指定されている作品は、
大雅が最も多いことは、
現在ではあまり知られていません。
文化庁にも数多くの大雅作品が収蔵されています。
川端康成、梅原龍三郎、谷川徹三ら
一流の文化人、画家たちも大雅に魅了され、
その作品を愛藏されていました。
国宝に指定されている「十便十宜図」は川端康成さんの旧蔵品です。