胴径 約6,6㎝
高さ 約6,8㎝
江戸時代前期
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太く、激しい動きで幹をうねらせる雲龍梅が、
棗の表面を覆い尽くしています。
「古刹の障壁画で棗をラップした」というのがいいかもしれません。
今までに出会った、蒔絵の施された棗の中で
ダントツ!です。
深い亀裂の入った太い幹は「合」(蓋と身の合わせ目)まで斜めに、
そこからほぼ真横に伸びて、
鋭角に「ぐい」と曲がって甲(蓋上)に向かいます。
暴れるような激しいうねり。
幾筋もの深い亀裂が表れた古木の幹。
肥痩をつけ、本銀を高く盛り上げた水の流れのようなラインを重ね、つなげることで太い幹を三筋に区切り、
それぞれの高い部分に金を蒔き、極く小さな金銀の切箔装飾を施しています。
老木の大胆極まりない、格調高い姿が見事に表現されています。
素晴らしいセンスと表現能力です!
このような豪胆な蒔絵表現は、
印籠や、書院に飾る硯箱といった、
極めて装飾性の高いお品に施されることはあっても、
実際に使うことが主眼の棗にされることはまずありません。
銀を体躯につかった主幹に呼応して、
梅の花々は金で蒔絵されています。
蕊の表現の細かく密なことは、驚くばかりです。
甲(蓋の上)は、
のけぞった龍の姿に似た幹が主役です。
(その証拠に、真ん中に位置する花は、二輪とも裏ろ姿です)
咲き誇る満開の花達は周りを縁取るように描かれます。
金一色でなく、銀がそこかしこに施され、
この上なく格調高く麗しい。
そして、なんてダイナミックな意匠でしょう!
地に塗られた漆は経年で透き通り、
所々赤く斑紋が出ています。
またよく見ると、地塗の表面にちりちりと非常に細かな断紋が表れています。
これは、時代を経た塗り物特有の現象です。
擦れ,小さな瑕疵がございます。
画像でご確認ください。
丸紋宝尽くしの時代の金襴裂仕覆はかなり傷んでいます。
箱底裏に
「塩見小兵衛」の墨書きと黒文円形印がございます。
塩見小兵衛
小兵衛は通称。正式には政誠。
正保3(1646)~享保4(1719)
京都の蒔絵師。
塩見小兵衛は研出蒔絵作品が有名な蒔絵師なことと、
箱の蓋表に
「サガ巻絵」と墨書きされていることから、
(「蒔絵」を「巻絵」と書くことは、この時代には往々にしてあることでございます)
本作品が塩見小兵衛の作品かは断定できませんが、
本作品が、類例のない秀逸な時代蒔絵の作品であることは、間違いありません。
¥350000
消費税・送料込
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横からの画像はやや縦長に写る印象です
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蒔絵が高く、少し盛り上がっています
銀が滲んでいるのは、本銀が時代を経て腐食するためです
本銀を使った古い時代の品の証です
蓋内側/ 小傷がございます
身内側/ はっきり見える小傷がございます
他にも経年の小疵がございます
底裏
擦れの筋が一本ございます
仕覆のコンディション
箱内/ 蓋裏
箱蓋表/ 箱裏