口径 約13,4㎝
底径 約5㎝
高さ 約5,5㎝
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永楽妙全
嘉永5年(1852)~昭和2年(1927)
千家十職土風炉師・永楽善五郎家14代・得全の妻。
本名/悠
藪内猗々斎
明治37年(1904)~昭和54年(1979)
藪内流12代・竹風紹智
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一つの箱に、2つペアで収められた平茶碗。
藪内流12代猗々斎の箱書きから、
豊臣秀吉から藪内初代・剣仲が拝領した桃山時代の屏風の、
左隻右隻それぞれの図を写した茶碗とわかります。
なるほど、蓋表の箱書きは
「橋柳之図茶碗《一双》」と記されています。
少し厚手の胎土で平茶碗の形とし、
高台脇約1㎝を残すところまで白釉を掛けて絵付けされています。
高台は低く、厚く轆轤でキリーっと面取りされています。
高台内は左回りの轆轤で、外側よりも少し深く削られ、
左下に「永楽」の印が押されています。
側面外側に、樹の低いアングル/幹を描き、
内側・見込みの向こう側から枝を垂らす柳。
葉は緑と金で描かれます。
枝の間に大きな銀の月。
見込みの手前には、銀の月に呼応する金の水車と波間の蛇籠。
内外の絵は物理的にはつながっていませんが、
物語として連続しています。
もう一つの茶碗は、全く違うデザインです。
側面外側の半分を占める大きな橋はすっかり金一色で描かれます。
橋の下の流れと蛇籠。
鮮やかな緑の柳。
中は縁から内側にかけて、金箔の重なりをあえて残して金雲が施されます。
金箔を貼った屏風の姿や、
屏風でよく用いられる、金雲で画面を仕切る手法を、
茶碗という器物に表現しているんですね。
創意工夫を凝らした、秀逸な上にも秀逸なデザインです。
屏風画面を貫く大きな橋、水車と蛇籠を添えて、それらをすっかり金一色で描き、
両脇に緑の柳が美しく映える「柳橋水車図屏風」は、
桃山時代の長谷川等伯を祖とする長谷川派の得意画題です。
慶長11年(1606)、豊臣家から豊国神社に奉納された《豊国祭礼図屏風》には、
同9年の秀吉七回忌の大祭の京の姿が描かれています。
描かれた町屋に飾られている屏風10点中2点が「柳橋水車図屏風」で、
当時京都でこの意匠の屏風が大流行していたことがわかるとか。
香雪美術館ご所蔵の、
長谷川等伯筆「柳橋水車図屏風」には、
本作品と同じように、銀の月が描かれています。
箱書きは、
「豊公
家祖剣仲居士拝領之
桃山百双屏風之図
をうつす
猗々(花押)」
藪内の宝物の図を写し描く茶碗を制作するに当たって、
お悠さんは、練りに練った意匠で最高の茶碗を作られたのでしょう。
特別な作品です。
橋が描かれた茶碗の高台に疵がございます。
釉薬の掛けられていない部分に汚れと使用感がございます。
画像でご確認ください。
藪内猗々斎書付共箱
¥132000
消費税・送料込
橋/月に水車
橋/月に水車
橋/月に水車
橋/月に水車
橋/月に水車
橋(内側)/月に水車(内側)
橋(底面)/月に水車(底面)
橋(内側)/月に水車(内側)
橋の個体疵と汚れ
箱蓋表/裏
箱裏/内側