本紙 約133,5×55㎝
軸装 約199 ×70,7㎝
紙本淡彩

高く険しい山の絶壁に、
丸太を組んで作ったギザギザ道が手前から上へと見え隠れしています。

長安と蜀の都の成都の間の大山脈を超える難所、蜀桟道です。
絶壁に穴を穿って作られた超難所ルート。

中国の詩文や絵画に古くから表わされた交通の要所です。

この大雅の「蜀桟道図」で特に有名なのは、
出光美術館ご所蔵作品でしょう。
出光作品は、もっと引いたアングルで、延々と続く桟道が強調され、
騎馬隊の列が描かれています。
大きさは136 ×57,5㎝ですので、本作品と大変サイズも似ています。

手前右手、中ほど右手、その上の左、
絶壁の岩肌を表現した皴の筆痕が太く、濃く、密に施されていますね。
「激しい巨石が迫り来る、もの凄く険しい山なんだ」
そんな感じです。
見たことが無いほど太い筆致で、垂直に強く引かれた皴もあります。

その割に、道を行く旅人たちは暢気な様子です。
こんな難所越えでさえ、楽しんで旅しています。
崖っぷちの建物の中で一服している人たちもいます。

様々な形の葉をつけた樹々が賑やかです。

大雅は旅が大好きでした。
昔の旅です。ほとんどは歩き、たまに馬に乗っていきます。
白山・立山・富士山の3つの霊山を友人たちと旅した記録をつけていて、
それによると、宿屋のない山中で日が暮れて普通の民家に泊めてもらったこと、
土地の訛りがひどくて何を言ってるかさっぱりわからなかったこと、など、
大変な経験の連続を心から楽しんで旅していたことがわかります。

本作品を見ると、
大変な難所を超える道行を、旅人たちが楽しんでいることが伝わってきます。
豊かな人生です。

強いタッチで描かれた前景から、
愛らしい点苔が遊ぶ遠い山頂まで、ずーっと楽し気な画世界です。

所々に代赭(朱)と藍が施され、
豪快な絶壁が生き生きと見えます。

印章〈遵生〉朱文長方印は、
30才代後期~生涯使われた印章。
〈池橆名印〉白文方印(左上が丸い)は、
30才代末から使われ始め、重要文化財「五君咏図」、出光美術館ご所蔵「瓢鮎図」と、
50才代最晩年まで使用された印章です。
この印影は、とてもよく似た左上が四角い印章もあり、
図版だと判断しにくいのですが、上記の作品は確実です。

「霞樵」とか「橆名」とか、款記はありません。
こんなに良い作品に款記が無いのは、
本来屏風に貼られていた連作の中の一枚であることが考えられます。

本紙にも、軸装にも、虫食いや傷み、その修復痕がございますが、
作品の素晴らしさは全く損なわれておりません。
コンディションと、款記のないことから、
リーズナブルにさせていただこうと存じます。

箱無

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池大雅筆蜀桟道図

   
この不揃いなのこぎりの歯みたいのが桟道です。
岩肌に穴を穿ち、丸木を並べて組んで作られた、山越えの危険な細道です。
池大雅筆蜀桟道図
確かな観察眼と研鑽に研鑽を重ねた筆致による、ファンタスティックな山の表現!
池大雅筆蜀桟道図
これ以上強い皴の表現はない!くらい、強く太い皴と、
後ろの美しい藍を施した岩のコントラストが見事です。
迫り来る岩の下をくぐって行こうとしていますね。
何か飲み食いしています、楽しそうです。

  
軸装コンデション悪し
  
コンデション仔細

捲れかかっています
 
唐木軸先

裏面
  
巻止めのコンデションも悪いですが、
掛けることに問題はございません。

出光美術館ご所蔵「蜀桟道図」はがき画像