本紙 約65,9×28,8㎝
軸装 約161 ×42,9㎝
紙本墨画

「天産奇葩 /てんさんきは」
は珍しくて美しい天然の花のこと。
大雅作品としていちばん有名なのは、
「天産奇葩図巻」(京都府蔵・旧池大雅美術館コレクション・寛延2年/1749)でしょう。

11mを超える長い巻物に、長い葉を撓らせる蘭の花を描いた画巻。
大雅27才の時、親友の高芙蓉と共に旅した北陸で描かれた作品です。

大雅は生涯に渡って蘭をモチーフとした作品をたくさん描きましたが、
本作品のように、花弁が鋭利な筆致なのは、
20才代の若い作品です。
本作品では花は2輪だけ。
一輪は、水平にピーンと、一輪は縦方向にピーンと花弁を広げています。

「天産奇葩」のタイトルは隷書体。
普通、隷書は硬い尖ったイメージですが、
大雅の隷書体は優しく可愛らしい独特の姿をしています。

款記(サイン)はありません。
「秋平」朱文聯印は、20才代作品にのみ使われた印章で、
池大雅作品集(昭和35年・中央公論美術出版)には4作品に捺されており、
上記の「天産奇葩図巻」(京都府蔵・旧池大雅美術館コレクション・寛延2年/1749)にも捺されています。

「秋平」は20才くらいからの、大雅の通称です。
消息(手紙)などには「秋平」と名を記しています。

もう一つの「消揺於巒光水景間」白文長方印は、
やはり20才代でのみ使われた印章。「天産奇葩図巻」にも使用されています。
作品集所載6作品に使用され、文化庁蔵・重文《前後赤壁図屏風》にも捺されています。
この屏風も寛延2年(1749)、27才の作。

同じ頃、とても若い時の作品です。
蘭の隣に描かれた枯木と思しき濃い薄い墨の影も、デコラティブ。
若くて尖ってるなぁ、の印象ですね。

本作品は、紙の中ほどに繋ぎ目があり、
墨が繋ぎ目に沿って滲んでいることから、
二枚の紙を繋いだ画面に描かれたことがわかります。
まだ若い大雅。
大きな紙を使う経済的余裕がなかったのかもしれませんね。

そんなところも愛おしい。

本紙左の空白部に汚れを取った痕跡がございます。
画像では強調されて見えますが、掛けて御覧になられると、
鑑賞に差し障りないことが感じていただけるでしょう。
本紙自体が大変綺麗なコンディションに手入れされています。
裏側から、折れを修復した跡がたくさんあり、
コンデションの良くなかった作品を丁寧に軸装し直したことがわかります。

時代箱
箱に、古裂を施したタトウ紙がつけられています。
箱の紐は鹿皮。
作品を軸装し直した旧蔵者の、作品への愛情と尊敬が推し測られます。

¥110000
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池大雅筆天産奇葩図

汚れ修復跡
裏面
折れの丁寧な修復
  

箱に、古裂を施したタトウ紙がつけられています

参考画像
「天産奇葩図巻」(京都府蔵・旧池大雅美術館コレクション・寛延2年/1749)部分
2023年京都文化博物館展示パンフレット表紙

池大雅
享保8年(1723)~安永5年(1776)
諱/橆名(ありな)・勤
字/貨成・公敏
号/大雅堂・三岳道者・霞樵・九霞、他

京都に生まれ活躍した、絵師で書家、文人。
当時、応挙・若冲と並ぶ、大人気アーティストです。
20才代ですでに名声が高く、
旅が好きで日本各地を旅したため、
日本各地に大量に贋物が存在しています。

近世の絵師で、
国宝・重要文化財に指定されている作品は大雅が最も多いことは、
現在ではあまり知られていません。
文化庁にも数多くの大雅作品が収蔵されています。