本紙 約129 × 28㎝
軸装 約214 × 43㎝
紙本淡彩

珍しく、大雅が画のタイトルを余白に記しています。

「秋谿漁舎」
《谿》は、「谷川」「谷の水が流れるところ」の意。

画面の上部分に、
紅に染まった山の懸崖から滝が流れ落ちています。

画面下では、
石垣の上の小屋から、
小さな子供が両手を振って、
釣り竿を担いだ人に笑いかけています。
可愛い笑顔です。

遠い山の皴も、樹々の葉も樹の幹も、
水分をたっぷり含んだ大雅特有の潤った筆致。

「墨画淡彩」としましたが、
代赭(朱)と藍色を施した部分がとても多く、
著色画といっても良いほどです。

秋が深まって、紅葉が見事な山間に、
雲がたなびく景色《白雲紅樹》。
大雅作品で、重要文化財指定された作品もある、
モチーフの一つです。
本作品でも、滝の落ちた遠景と、
人の営みの描かれる全景の間に白い雲があって、
それは、上から降りて来るように、
上下の画面に関係性を持たせています。

遠くに描かれた滝の水は、
手前の家の前、細い橋の下に流れて来ているんだな。

清浄で、温かな、気持ちの良い画です。

見ているこちらの心まで清らかになる気がします。

そして、こんなに良い笑顔の子ども!
きっと、橋を渡って帰ってくるのは愛しい人なんだな。

良い画は、何百年たっても、
中で人が生き生きと生きています。

本紙の左下にキズが一ヶ所ございますが、
それ以外は非常に良いコンデションです。

「霞樵」朱文連印
「前身相馬方九皐」朱文長方印。

上下一文字裂は蟹模様。沢蟹です。
遊び心のある方が表具されたのでしょう。

合わせ箱

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池大雅
享保8年(1723)~安永5年(1776)
諱/橆名(ありな)・勤
字/貨成・公敏
号/大雅堂・三岳道者・霞樵・九霞、他

京都に生まれ活躍した、絵師で書家、文人。
当時、応挙・若冲と並ぶ、大人気アーティストです。
20才代ですでに名声が高く、
旅が好きで日本各地を旅したため、
日本各地に大量に贋物が存在しています。

近世の絵師で、
国宝・重要文化財に指定されている作品は大雅が最も多いことは、
現在ではあまり知られていません。
文化庁にも数多くの大雅作品が収蔵されています。

川端康成、梅原龍三郎、谷川徹三ら
一流の文化人、画家たちも大雅に魅了され、
その作品を愛藏されていました。
国宝に指定されている「十便十宜図」は川端康成さんの旧蔵品です。

池大雅筆 秋谿漁舎図