本紙 約123,3 ×41㎝
軸装 約215,5 ×46,5㎝
紙本淡彩

賢聖四十余人一觴一詠而
嘔懐可謂信娯楽之極矣

池勤併録

「勤」は、大雅の若い時、20歳から27歳まで使った名前です。
「池勤」と銘した中でも、本作品のように
小楷で書かれた款記は類例が少ないです。

「無一道人」白文方印も
「太平百泉」朱文古銭印も
他に捺された類例のない印章です。

款記の書も、画の筆致も大雅に間違いなく、
新発見と思われます。

20歳代の大雅作品の大きな特徴のひとつは、
画面の水平が斜めであることです。
神経質な鋭いタッチも、20歳代の特徴です。

しかし本作品は、地面はすっかり水平で、
全体的に柔らかな印象です。

印章も確認されていないし、大雅作品ではないのか?

よくよく見ると、
やはり非常に繊細な初期大雅のタッチなのです。

ぱっと目につく手前の松の樹の葉の細い一本一本、
その後ろの何か太い樹木の葉の一枚一枚、幹の表現。

蘭亭に集った人々のリラックスした姿、
それぞれの表情をご覧ください!
この人は、きっと精神が奥深すぎて、気難しいんだろうな、
そんな方もいます。
大雅は画風を確立すると、人物の描き方が独特になりますが、
そこに到達するまでに、
繊細な表情の表現を極めた過程が、
本作品には表わされています。

上方右の懸崖の表現は鋭く、何度も筆を繋いでいて、
対照的に、崖から落ちそうな枝振りの樹木の葉は柔らかく密に丁寧に描かれています。

大雅の20歳代の作品と、
30歳代後半に、スタイルを確立した後の作品には、
画風に大きな隔絶があるのですが、
その過程が感じとれる作品です。

手を入れると千切れそうに冷たかった清水が、
汲まれて温められ始めたという感じです。

樹々の葉影や岩肌に、薄く藍が施されています。
人々の衣の立体感も、薄藍によってつけられています。
人物の肌は、ごく薄い代赭(朱)が施されることで体温が伝わります。

蘭亭敘は、永和九年(353)に王羲之が催した文人たちの最高の宴の書。
大雅の理想であったでしょう。
その蘭亭敘の世界を描いた作品です。
若い大雅がその時持っていた、最高の情熱で制作されています。

本作品は、
弊店の所蔵する40歳代前半に描かれた蘭亭曲水図と、
構図・人物表現がとてもよく似ています。
若い時代の構想が、
年を重ね、より完成された絵画表現になったのであろうと、
感慨深いです。

参考作品◆池大雅筆 蘭亭曲水図◆

巻き留めに、渡辺華石(1852~1930)による鑑定書き。
渡辺南岳(1767~1813/円山応挙の高弟)識二重箱

ごく僅かなシワだけで、抜群のコンディション。
最高級の軸装です。

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金襴一文字裂/ 最高級の象牙軸先
  
内箱・外箱
 

内箱箱書きは擦れて、中央部分が傷んでいます。
弊店別作品との比較
◆池大雅筆 蘭亭曲水図◆

細部比較

池大雅
享保8年(1723)~安永5年(1776)
諱/橆名(ありな)・勤
字/貨成・公敏
号/大雅堂・三岳道者・霞樵・九霞、他

京都に生まれ活躍した、絵師で書家、文人。
当時、応挙・若冲と並ぶ、大人気アーティストです。
20才代ですでに名声が高く、
旅が好きで日本各地を旅したため、
日本各地に大量に贋物が存在しています。

近世の絵師で、
国宝・重要文化財に指定されている作品は大雅が最も多いことは、
現在ではあまり知られていません。
文化庁にも数多くの大雅作品が収蔵されています。

川端康成、梅原龍三郎、谷川徹三ら
一流の文化人、画家たちも大雅に魅了され、
その作品を愛藏されていました。
国宝に指定されている「十便十宜図」は川端康成さんの旧蔵品です。