長 18,2㎝
丸櫂先・丸撓
逆樋・双樋
直腰・中節
五刀

七代目松本幸四郎
明治3年(1870)~昭和24年(1949)
藤間流家元・二代目藤間勘右衛門の養子で、
九代目市川團十郎の門弟となる。
歌舞伎俳優としての名は、市川金太郎→四代目市川染五郎→八代目市川高麗蔵→七代目松本幸四郎。
時代劇鬼平犯科帳の鬼平役で有名な二代目中村吉右衛門さんの祖父にあたります。
ちなみに、鬼平犯科帳は、
吉右衛門さんの実父・初代松本白鸚さんをモデルに、池波正太郎さんが書かれました。
初代の鬼平は松本白鸚さんです。

櫂先から、中節の上2㎝くらいまで黒っぽくなっています。
それがちょうど雨降りの景色です。
高い空いっぱいの黒雲から雨が降っています。

逆樋の中節の竹の芽は、
雨をよけるために少し開いた和傘にも、
雨空の下の家の屋根にも似ています。

節留は、少し幅が出してあり、丸みをもたせてあります。
五刀の切り口は見事です。

櫂先の撓めも美しいアールです。
非常に丁寧で上品な作ゆきです。

筒の削りも大変に丁寧で、底や詰蓋の切り口もこれ以上なくキリっとした姿。
また、筒書き、箱書きのお手も感動的に美しい。

公式ホームページ「Kabuki on the web」の歌舞伎俳優名鑑のこの方のプロフィールに、
「人格者として、劇界の内外から敬愛され」と記されています。
本作品の作ゆきからも、真面目さや情熱、教養の深さ、贈る相手への心遣いが容易に看取されます。

筒書きの下方に書かれた「琴松」はこの方の俳号です。

箱の蓋裏、
「於毛ん(おもん)様に贈る」
「大正丙寅葉月 幸四郎自作」
見事としか言いようのない筆、良質な墨。

この年は大正15年で昭和元年。
幸四郎さんは57才で、帝国劇場で副座長をお勤めになり、
新作や翻訳劇もされていた時期です。

識者の方から、七代目松本幸四郎は、昼と夜の舞台の間に茶杓を削っていた、
とご教示いただきました。

手に取ると、節の上に小さな雨粒の景色があって、
あまりにドンピシャな銘がつけられているとわかります。
よほどお茶に造詣が深く、感性豊かな手練れでなければ、
こんな茶杓は作れないでしょう。
その芸の素晴らしさが、茶杓にも現れているように思います。

筒の詰蓋との〆印に汚れがついています。
墨が乾く前に触れてしまった汚れです。
まだ墨が濡れている間に相手に渡そうとしたのかな。
妄想が膨らみます。

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七代目松本幸四郎作茶杓銘「五月雨」

七代目松本幸四郎作茶杓銘「五月雨」
    

七代目松本幸四郎作茶杓銘「五月雨」  
箱蓋表/裏
  
筒表/裏