本紙 約36,5 × 19㎝
軸装 約132,5 × 31,2㎝
絹本墨画
□
森寛斎
文化11年(1814)~明治27年(1894)
明治初期~前期の京都画壇を代表する絵師。
京都府画学校の先生を務め、帝室技芸員でもありました。
宮内庁三の丸尚蔵館、三井記念美術館など、数多くの美術館がその作品を所蔵されています。
本作品は、縦36,5㎝・横19㎝の小さな画絹に描かれた、
瀧を昇る鯉。
輪郭は描かずに鯉の姿を表しています。
身悶える鯉の動きと、激しく攪拌され波立つ滝壺の水の関係が、
肌感覚で伝わる筆致です。
寛斎は明治の応挙とも呼ばれるそうですが、
こんな描写は、並の絵師にはできないと、納得します。
画絹がかなり汚れていますが、
ちょうど波立つ水の描写と重なって、あまり汚れと感じません。
特に、しつらいとして床や壁に掛けて離れてみると、
汚れと認識できない感じです。
ところで、
本作品の軸装は、かなり変わっています。
違和感を持たれた方は非常に鋭いです。
画絹部分と上下一文字、中廻し裂は非常にオーセンティックですが、
天地の裂は、
幾何学的な小さなモチーフを散らし尽くした染物。
そして、天(上)の裂は、細い線を挟み込むことで逆Yの字に区切られています。
まるで、天地の裂が背景(壁)で)、
中廻しのグリーンの牡丹唐草金襴で軸装された作品を吊っているような仕立てです。
滝登りの図は、
男の子の立身出世を願う端午の節句のしつらいです。
思うに、
天地裂のモチーフは玩具のイメージで、子供に寄せたモダンな文様。
そこに、「古典に則った一流絵師の小品を掛けています」
の意図が暗示されています。
非常にウイットに富んだお洒落な方が軸装されたのでしょう。
軸の左側に浸水によるシミがございますために、
非常に格安です。
ですが、濃い色のにぎやかな裂で軸装されているために、
あまり目立ちません。
今年は辰年ですので、
季節を問わずにお使いいただけます。
時代箱
¥25000
消費税・送料込
本絹の汚れ
軸装の汚れ
軸先木製
裏面/ 巻き留
こんな見え方です