本紙 約133,1 ×56,6㎝
軸装 約220 ×70,4㎝
紙本

廬山霧開見瀑布
曲江月淨聞漁歌

北宋の詩集「文苑英華」巻第221に収められた、
劉禹錫(りゅううしゃく/772~842)の詩「送鴻擧遊江南」の中の14文字。

「廬」の一画目、
たっぷり筆に含ませた墨を、大きくまあるく落とす印象的な一画。

これは大雅の得意技です。
書くことを心底楽しむ境地に至り、
「ノッて」います。
「開」の最終画の長いこと!

「月」は、書き始めに筆を留め、墨が丸く溜まっ手から一気に次の字に走っています。
ゆらゆらと揺れて、
水に映った月のようです。

劉禹錫のオリジナルは「淨(浄/きよい)」ですが、
この書体から判断して、大雅は「静」を充てています。

劉禹錫「送鴻擧遊江南」は、146文字の長文。
その中から、大雅は14字だけを抜粋。
「この部分を書にしたらすてきだろうなぁ!」
そう思ったのかな。

それぞれの文字の形を知り尽くし、
それぞれが最も「生きる」姿を与えた。
平たくいうと、
「カッコよく書く」ことを捨て、
それぞれの文字の一番生き生きとした姿のために書かれた作品であるように感じます。

出典の北宋の詩集「文苑英華」は、
明・清時代に編纂された「全唐詩」などに再録されて、日本に伝わりました。
当時、一番イケてるカルチャーであった、中国の教養を、
大雅が高い熱量で学び、我が物とし、
自由自在に書いた至極の一幅。

款記「霞樵」も大きい!
大雅の自信のほどがうかがえます。

関防印「遵生」朱文長方印は、30歳代後期~生涯使われた印章。

「池橆名印」白文方印
「弎岳道者」白文方印
この2印は、30才代後半から使われ始め、40才代で非常に多く使われ、
50才代、最晩年まで使われた印章です。
ペアで捺されることが多いです。

池大雅作品集(昭和35年・中央公論美術出版)掲載682が作品の内、
64作品にこの2印がペアで捺されています。

軸装が仕立て直され、非常にコンディションが良いです。
所々にかすかな墨の汚れがございます。
「布」の文字に畳の目が現れていますので、
興が乗って一気に書いたその時に、ちょいちょいとついた汚れと推測いたします。

大雅堂五世定亮の題識二重箱

大雅堂定亮
明治43(1910)没
大雅亡き後、大雅愛用の品や作品を守るために、
門人月峰らにによって作られた大雅堂5代目。
月峰の次男・清亮の子。

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池大雅筆廬山霧開


 
印章
   
汚れ部分

 

内箱の側面に墨

几帳面の施された極上の内箱/ 印籠蓋造漆塗外箱