本紙 121,3 ×38,5㎝
軸装 189 ×52,4㎝
紙本淡彩
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透明な美しいブルーの背景は、澄み切った空気の秋の空のようです。
とてもたっぷり水分を含んだ筆で藍が淡く刷かれ、
おおらかに、おおらかに、菊化が一本描かれます。
「気持ちがいいなぁ」
それ以外何もない画です。
大雅は数多く菊を描きましたが、
一輪の菊花の花弁は一枚一枚描いています。
池大雅作品集(中央公論美術出版・昭和35年)に掲載されている画作品682点の内、
菊を描いた作品は、16作品ありますが、
本作品のように、もこもこと一輪の花を塊で描く作品は、
一点もありません。
本作品は、大雅の菊図の中でも、非常に稀な描き方です。
これは、テーマが描かれていない背景部分の処理と、
関係があるように思われます。
大雅の菊図としては珍しく、
割とまっすぐな茎の菊の花。
その周りは、たっぷりの水で潤った淡い藍色がむらむらと施されています。
菊の葉も茎も、仔細は省略し、大胆に一筆で描かれています。
ギリギリまで潤いに満ちて描こう、
そんな感じです。
そのために、花は塊として描く必要があったのでしょう。
この、背景に薄い色(墨)を刷くやり方は、
慈雲尊者(1718~1804)との合作、
「文殊菩薩像」にも使われていて、
菩薩の背後から発せられる光明を際立たせるために、
文殊と、文殊を乗せた獅子の背後に施されています。
款記は
「九霞筆」
真っ黒な墨で、いかにも気持ちよさそうに、
強く記されています。
一画目を太く、文字全体が小さな「九」の下に、
雨冠が横に長く、大きく自由奔放、最後の画が流れからキュッと折れる姿の「霞」。
シビレます。
印章、
「无名」白文方印
「霞樵」朱文方印
この二つの印章は、30才代と思われる作品にのみ捺されていて、
常に一緒に捺されています。
大きさが同じですので、同じ印材の両面と推測しています。
「池橆名印」朱文方印
は、年記により確認できる作品の初見は「梅花草堂図」(37才)。
30才代から最晩年と考えられる作品に数多く捺された印章です。
上記の慈雲尊者との合作と、
ほとんど同じ構図の弊店作品画像を、参考に添付いたします。
ゆるキャラのように可愛い獅子の鼻は、
菊の葉に良く似ています。
ご覧ください。
本紙にシミが出ています。
軸装の表具紙に折れ、捲れ始めた箇所がございます。
鑑賞に差し障る程度でありません。
「福寿」の文字尽くし摺紙の表具。
桑軸先
「伊セ小津家伝来」朱書二重箱
透明な藍色が非常に美しい、心に沁みる作品です。
¥220000
消費税・送料込
款記印章
シミ程度
表具紙・桑軸先
表具紙の折れ 、傷み
箱次第
箱に修復・傷みがございます
右参考画像
弊店蔵 池大雅筆 三尊佛像
菊の花のもこもこ具合と葉っぱの丸さ、
文殊を乗せた獅子とまん丸の鼻。似ています。