本紙 129,8 ×29,3㎝
軸装 201 ×45㎝
紙本墨画

和光蕩晩日
柳影帯晴烟

五言の二行は、大雅の自作の詩と思われます。
大雅は中国文化に猛烈に憧れ、学び尽くしていましたので、
詩文は中国の古典作品が多く、
大雅自身の作ったオリジナルの詩が書かれた作品は少ないです。

柔らかな光が揺れて、
柳は、晴れた日の霞に包まれているなぁ

本作品で特筆すべきは、
水分をたっぷり含んだ筆致でしょう。

一番手前に、幾筋も幾筋もに重ねられた水面の表現。
湖に湛えられた水が揺らめいています。

大雅らしい、一枚一枚の葉の存在を確かに現した木の後ろに、
珍しく、塊として枝を描いた樹が立っています。
その瑞々しい墨の筆致!
コントラストも素晴らしい!

何も描かれない中ほどの水辺、
心が晴れ晴れとするような空間です。

岸の向こうに描かれた点描は、柳の葉がキラキラときらめいている様子です。
そして、詩の通り、霞が白く柳の樹々の間を這っています。

「漁楽図」(京都国立博物館蔵/重文)も、
「瀟湘勝概図屏風」(個人蔵/重文)も、
「十二ヶ月離合山水図屏風」(出光美術館蔵/重文)に於いても、
大雅は柳の葉っぱを点描で描いています。
これは、大雅独特の表現です。

柳の後ろに聳える山も、
非常に潤った筆致で描かれます。
山の輪郭も、山肌を表現する重ねられた皴も、点苔も、
限界に水分の多い筆で、滲んでしまうほどです。

なんて気持ちの良い画!
大雅にしか描けない、胸のすくような明るく清澄な画世界です。

目を細めて、全体的に見ると、
下の水面、
台地と渓舎、
繁った樹の枝、
舟の浮かぶ水辺、
柳の群生、
霞、
遠くの山
と、黒白がだんだらのリズムになっています。

見る者は無意識に引き込まれ、
階段を昇るように高められ、
自然と大雅世界の気持ちいい空気で呼吸し始めます。

款記
「橆名写」

関防印「前身相馬方九皐」朱文長方印
「霞樵」朱文聯印

は、共に、
30歳代半ばから、生涯使われ、最も使用頻度の高い印章の2つです。
この二つが同時に捺された作品は、
池大雅作品集(昭和35年中央公論美術出版)掲載画作品682点中、
84作品と、非常に多いです。

本紙の上部中央に輪ジミが連続しています。
他にも汚れ、折れがございます。
軸装にも小さな汚れが散見されます。

象牙軸先
時代箱

¥605000
消費税・送料込

◇お問合せフォーム◇

◆お買い物の流れ◆
◇営業予定◇

◇facebook◇

池大雅筆柳影帯晴烟図

  
刻々と変わる水面の姿
一枚一枚、葉として存在しています
「個」と「群」、「白」と「墨」、「線」と「面」
何重にもコントラストを成しています
こんな絵画表現は大雅以外の誰ができたでしょう!

 
「霞樵」朱文聯印/ 「前身相馬方九皐」朱文長方印
 
輪ジミ部分/ 汚れの程度
軸先象牙
裏面
 
やや箱が大きいです
  

池大雅
享保8年(1723)~安永5年(1776)
諱/橆名(ありな)・勤
字/貨成・公敏
号/大雅堂・三岳道者・霞樵・九霞、他

京都に生まれ活躍した、絵師で書家、文人。
当時、応挙・若冲と並ぶ、大人気アーティストです。
20才代ですでに名声が高く、
旅が好きで日本各地を旅したため、
日本各地に大量に贋物が存在しています。

近世の絵師で、
国宝・重要文化財に指定されている作品は大雅が最も多いことは、
現在ではあまり知られていません。
文化庁にも数多くの大雅作品が収蔵されています。

川端康成、梅原龍三郎、谷川徹三ら
一流の文化人、画家たちも大雅に魅了され、
その作品を愛藏されていました。
国宝に指定されている「十便十宜図」は川端康成さんの旧蔵品です。